メニュー

『死神の精度』のあらすじと感想!(ネタバレあり) – 少し天然な死神が調査する六人の一週間

本書は、タイトル含む六つのお話で構成される短編集になっています

また、映画化もされており、2007年に『Sweet Rain 死神の精度』というタイトルで、本書の六つのお話のうち『死神の精度』、『死神と藤田』、『死神対老女』が映画用にアレンジされています

自分は死神というとデスノートのリュークのような、人間っぽい形はしつつも人間とは似て非なる姿というイメージがあります

ですが、本書では姿を自由に変えられるという条件はありつつも、しっかりと人間の見た目をしており、親しみやすい印象になっています

さらに、思ったことをなんでも言ってしまったり、音楽をこよなく愛していたりなど死神っぽくないような面も見受けられます

こんな人間のような死神を実際に目にしたら、死に対するイメージがガラッと変わるかもしれません

今回は本書の

  • あらすじ
  • 個人的な感想

を書いていきたいと思います!

目次

本書の世界観について

各短編のあらすじに入る前に本書の世界観について簡単に触れておきたいと思います

この世界に存在する死神は、死ぬ予定にある人間を一週間調査を行い、「死」を実行するのに適している場合は『可』、適していない場合は『見送り』と報告を行います

調査といってもたいそうなことではなく、一週間前に相手に接触し、二、三度話を聞くだけといった内容。

また、その調査制度は儀式的なもので、よほどのことがない限り『可』の報告を行い、さらに判断基準も個人の裁量に任せられており、かなりいい加減になっています

そんな世界の中で、主人公である死神の「千葉」はどのような調査を行い、どのような判断を下すのでしょうか。

あらすじ

各短編のあらすじについて触れていきます

以下の六つのお話があり、各話ごとに項目を用意しています

  1. 死神の精度
  2. 死神と藤田
  3. 吹雪に死神
  4. 恋愛で死神
  5. 旅路を死神
  6. 死神対老女

①死神の精度

ミュージックをこよなく愛し、仕事の時は毎回雨という千葉

今回のターゲットは「藤木一恵」という会社員の二十二歳の女性、千葉はきっかけをつくりどうにかターゲットに接触します

ターゲットの一恵は、大手電機メーカーでクレーム対応を行う業務を任されていると話します

また、わざわざ自分を指名してクレームの電話をする男がいるとのことで、最近は特に気が滅入っていました。

そんな中、ある日千葉は、そのクレーム男が一恵に接触し、彼女が振り払い逃げ出すところを目にします

その後、そのクレーム男が誰かに電話をし、その内容を千葉は偶然耳にします

クレーム男はただのストーカーなのでしょうか

最後に千葉は一恵に対しどのような報告を行うのでしょうか

読む内容としては、本書の世界観、千葉の性格共に、とてもわかりやすいお話です

ねねね
ねねね

人間の死に対して興味がない千葉だからこそ感慨深い、ちょっとほっこりする良いお話でした

②死神と藤田

今回のターゲットは「藤田」というヤクザの男です

藤田は、ヤクザ界隈では今時めずらしい、筋をまっすぐ通す真面目なヤクザでした

そんな一面もあり、藤田は同じ組のヤクザに煙たがられていました

そんな中、藤田は栗木というヤクザの組ともめ事を起こし、同じ組のヤクザに栗木との取引材料として利用されてしまいます

藤田の舎弟である「阿久津」はどうにか藤田を救えないかと千葉と協力し、栗木に先手を打とうとします

ところが阿久津と千葉は、栗木に捕まってしまい絶体絶命のピンチに陥ってしまいます

捕まっている中千葉は、死神であるがゆえに、栗木達と一緒に行動している同僚の死神がいることに気づきます

そこで千葉はどのように行動を取るのでしょうか

死神が行う死の制度やルール、仕組みをうまく利用したお話になっています

ねねね
ねねね

千葉が取った行動には驚きましたが、その後の展開を見て頭いいなと感じました笑

③吹雪に死神

舞台は、辺り一面が白い雪で覆われた洋館

その洋館には複数の男女が宿泊客として旅行に来ていました

千葉は、あらかじめ「その洋館内で複数の人間が死ぬ」と情報が与えられつつも、その宿泊客の一人、「田村聡江」の調査を行うため洋館へ向かいます

洋館内では同僚の死神がすでに『可』の報告した人間が複数おり、連続殺人が発生します

千葉は死神ならでは得られるヒントを元に、誰がなぜこの人を殺したのかという推理を行います

今までとは異なるミステリー小説のようなお話です

ねねね
ねねね

つい千葉と一緒に推理してしまい、最後にはそういうことだったのか!と二度楽しめるお話でした

④恋愛で死神

場面は千葉がターゲットの「萩原」の死を見届けるところから始まります

話は一週間前に戻り、千葉は萩原は向かいのマンションに住む「古川朝美」に恋をしていることを知ります

その後、萩原と朝美は何度か会話を交わし、二人は恋に落ちていきます

そんな中、朝美は「最近勧誘の電話が来て困っている」と千葉、萩原に相談をし、住所がバレてしまったのではないかと恐怖していました

数日後、実際に電話相手に住所がバレてしまい、朝美の玄関のドアにはひどい落書きがされていました

そして最終日、萩原は朝美の部屋に侵入する男を目撃します

慌てて駆け付けますが、相手は包丁を持っており萩原は刺されてしまいます

千葉はその後、まだ何も知らない朝美から、萩原との出会いの話を聞くのでした

ねねね
ねねね

萩原が大好きな恋人のために精一杯生きていた姿にはとてもグッとくるものがありました

⑤旅路を死神

ターゲットは母親を刺し、その後無関係の他人を刺殺した逃亡中の若者「森岡耕介」

千葉は逃亡中の森岡を車に乗せ、森岡が言う目的地に向かうため逃亡の手助けを行います

逃亡中の手助けをしている際に、千葉は森岡から過去の話を聞くことになります

5歳だった当時、家が金持ちだった森岡は金銭目的のため誘拐されトラウマになっていること、そしてその誘拐したグループと一緒にいた監視役の杖を持った深津という男がその場から逃がしてくれたこと

さらに森岡は、助けてくれたとはいえ犯人の一人である深津を、殺害するために目的地に向かっていると言います

それを聞いた千葉は、一つの考えを森岡に話します

千葉の考えを聞いた森岡は殺害しようとしていた心が揺らいでしまいます

深津はなぜ森岡を逃がしたのか、また目的地に着いたとき森岡はどうするのでしょうか

ねねね
ねねね

逃亡中に訪れる綺麗な自然を用いて、森岡の心情を表すとても印象に残ったお話でした

また、最後の森岡の行動はうるっときてしまいました

⑥死神対老女

今回は老舗の美容院を営む七十過ぎの老女がターゲットで、千葉が死神であることに初めから気づいていました

死神である千葉に怯えるどころか、千葉に対し「十代後半の男女四人くらいを美容院に勧誘してほしい」とお願いをします

千葉は理由はわからないながらも、「老女に接触する理由になる」とそのお願いを聞き入れます

なぜ老女はそのようなお願いをしたのか

それは当日老女から伝えられ、さらにもう一つ新たな事実が判明します

ねねね
ねねね

今までのお話とリンクするところがあり、老女の過去や老女の願いがわかった時には心にくるものがありました

本書の終わりを飾るにふさわしい、すっきりとするような気持ちの良いお話でした

本書の感想

千葉の性格がとても好みでした

思ったことをすぐに言ってしまったり、ちょっと天然なところがある千葉の性格に、クスっとなるところが多く、非常にこの作品を面白くしてくれていると感じました

また、各登場人物もとても魅力的で、人間同士が話すのとはまた違う「死神」と「人間」という立場での掛け合いが読みやすくしてくれています

千葉は人間に対し、特に何の感情も抱かずに行動しているのですが、そんな千葉の行動を見て人間が考えを改める、一歩前に進む勇気をもらう、という何らかの影響を及ぼす様がとても印象です

千葉がいるからこそ成り立つ物語、彼の存在あってこその各お話が結びつく

一つの作品としてとても綺麗にまとまっていると感じました

好きなフレーズ

とりあえず、「これは」とフォークに刺したニンジンを頬張り、「やばいくらいに」と噛みながら、「うますぎる」と飲んだ。

旅路を死神

森岡の食べ方を完全に真似るおちゃめな千葉が見られるシーン

何百年、何千年と生きている千葉が、無感情で若者の言葉、動作を完コピしている様がシュールで面白い


「一生懸命頑張って、どの子も凄く似合う髪にしてあげたから」

死神対老女

千葉が勧誘した男女の髪を老女が切った後のセリフ

老女が千葉にお願いした理由も相まってとても優しい気持ちになる

まとめ

「死神」という単語に惹かれ読み始めた本書ですが、死神とあるからには暗いお話が多いのかとおもいきや、心が温まるようなほっこりするお話がほとんどで驚きました

死という暗いものを題材とし、こんなにも心温まる内容にしてしまう伊坂さんはすごいなと改めて感じました

伊坂さんらしい特徴的で魅力的な登場人物や、ほどよい長さで読みやすいお話ばかりですぐに読み進めてしまいました

もっとこの世界観を味わいたく「続きは無いのか!」と調べたところ『死神の浮力』という続編?もあるようで「やった!!!」となりました

『死神の浮力』のほうも読み終わり次第、レビューしたいと思います!

  • URLをコピーしました!

書いた人

1K6畳住み一人暮らし
快適な部屋にするために日々邁進中

目次
閉じる